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hort story

花束
先日知らない男から花束をもらった。
渡すはずだった人が現れずに、どうしても持っていたくなかったらしい。
同じ場所で人を待っていた俺が
「大きい花束ですね」
と声をかけたのがいけなかった。
その男は早口で状況を説明し、半ば無理矢理に俺に花束を預け、
そそくさとその場から去っていった。
まわりの視線がなぜか冷たい。いや勝手に俺がそう感じただけなのかもしれない。
なんだか居心地が悪くなったので、少しその場から離れた。
ふと、花束の中に小さい手紙を見つけた。
中に何か書いてある。

「この花の花言葉を知ってるかい?君は知らないだろうね。
 この花の花言葉は、『思い出』。さあ、僕と思い出を作らないかい?」

モテない男は手紙も冴えてない。
その手紙だけすぐに捨てて、俺はこの花を部屋に飾った。
なんだかやけに長持ちしていて、そう、確かに思い出に残るかもしれない。

- written by kim -

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