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hort story

ある時計
久しぶりに中国人の友達の家に遊びに行った。
最後にこの部屋に来たのは3年位前だっただろうか。
玄関に並ぶ靴の趣味がまったく変わっていないのが彼女らしい。
手土産に烏龍茶を買って来たが、全然笑ってくれなかった。
少し強引に呼び出された俺は、なかなか話を切り出さない彼女が何か隠してる様に感じた。
二人とも黙ったまま、安い烏龍茶を飲んだ。彼女は深く息を吸い、覚悟が出来たのかようやく小さな声で話を始めた。

・・・!?


嘘だろ!?


あまりの内容に喉がカラカラに渇く。

心臓を冷たい水に付けられたような感覚に襲われ、冷や汗がシャツの内側を伝う。

やっと話を聞き終えた。言葉を無くしたままの俺を見て、ため息をついた彼女が寂しそうにゆっくり台所に入って行く。

そんな事が本当にあるのだろうか。

彼女が台所で静かに泣いている間、ふと壁にかけられた時計が目に入った。

確かに、その時計はちょうど1時間狂っていた。
すぐ近くには使えなくなったタイムマシン。

彼女はもう、二度と、過去に戻れなくなっていた。

- written by kim -

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