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hort story

彼女の分なんです
一年振りに電話をかけてきた友人から聞いた話だ。


よーキム、久しぶりだな。どうせ元気あるのにあんまりやる気無い感じなんだろ? はは分かるよ。
俺?俺は今四国に居て、カフェで働いてるよ。そこにさ、一人の男の客が来たんだ。
そう、話はこれからだ。
この店は少しかわいらしい内装が評判でさ、男が一人で来ることは滅多にないんだよ。
黒のジャケット着てさ、目立ってたんだ。
注文を取りに行くとこれがまた少し様子がおかしい。デザートのパフェを二つ頼んだんだ。ウチのパフェはでかいんだぜ。まるで魚を売って歩くおばあさんの荷物くらいでかい。
よくわからないか。ハハハ。
さて、ドリンクの注文も二つだ。しかも一つのドリンクにはミルク入れちゃって下さいって言うんだよ。
こいつは何かある、と思いながらいつものスマイルでそこを離れようとしたその時、俺は見ちゃったんだ。
その男は写真を握ってたんだ。かわいい女の子が写った写真だよ。
わかるだろ?キム。
その日はきっとその彼女の命日だったんだ。
察した俺は言われる通り料理を作りミルクを入れ、運んだ。

その時ちらっと男の顔を見たとき衝撃が走ったんだ。
不覚にも持っていた紅茶をこぼしちまった。
その男は顔半分に化粧をしてたんだ。どぎつい口紅をはみ出しまくって塗り、目の下には涙が一粒描かれていた。
とっさに俺は聞いちまったよ、
彼女の命日ですよね?
ってさ。
そしたらその男は低い声で、はい、、彼女、泣き虫だったもので。
って言うんだよ。
分かるかキム。
これが真実は小説より奇なりってことさ。
それじゃあなキム。

そう言って電話は終わった。
きっとこれは真実じゃないな。俺はそう思う。

- written by kim -

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